現在の日本は、全人口のうち21%以上が高齢者である「超高齢化社会」です。そのため、介護業界では人手不足や職員の離職率の高さが顕著になっており、介護施設の入居待ちが何年も続いたり、入居できても十分なサービスが受けられなくなったりなど、深刻な問題となっています。
介護職従事者不足の解消を図るために、2016年11月には外国人が介護職に就くことのできるビザを認める法案が成立し、2017年9月より運用が開始されました。
そんな「介護ビザ」とはどのような在留資格なのでしょうか。当記事では、介護ビザについて、取得方法、期間、要件などを詳しく解説します。
外国人の介護職の雇用を考えている人は、どのような受け入れ態勢をすればよいのか、介護ビザではどのくらいの介護技術・日本語能力で取得できるのかを含めて参考にしてみてください。
介護ビザとは、介護福祉士の国家資格を取得した外国人が長期間働くことができる在留資格です。2017年9月より運用開始されています。
外国人介護士が就労できるビザは、大きく分けて介護ビザ・特定活動ビザ・技能実習ビザ、2019年4月に導入された特定技能ビザの4つです。
在留資格「特定技能」(特定技能ビザ)とは?外国人材受け入れ企業への影響まとめ
先ほども述べた通り、現在の日本は65歳以上の人口が約25%を占めている超高齢化社会で、この傾向は今後さらに進行していくと言われています。
そこで、介護人材不足を補うための施策の一環として、法律を改正し外国人が介護現場で働くことができる介護ビザの創設を行いました。
介護ビザの在留期間は、最長5年です。更新も可能なので、実質的には期間の制限なく在留できるビザであると言えるでしょう。
日本で外国人が介護士として働くには4つのパターンがあります。それぞれ認められている在留期間やどのような仕組みであるのかを解説いたします。
EPAとは、インドネシア・フィリピン・ベトナムと日本における経済連携協定のことです。この3か国からの人が対象で、介護福祉士の資格習得までの4年間と資格習得後の3年間が在留期間として認められている特定活動ビザです。介護福祉士の資格を取得すれば日本で就労でき、在留期間の更新も可能ですが、資格が取れなければ帰国しなければなりません。
技能実習生の中の介護職種カテゴリーでの在留資格です。在留期間は最長5年ですが、特定技能ビザへの移行以外での在留資格更新ができず、3年目終了時に一時帰国が必要(原則1か月以上)など、制約は多いです。
「日本の公私の機関との契約に基づいて介護福祉士の資格を有する者が介護または介護の指導を行う業務に従事する活動」を認める在留資格です。介護福祉士を養成する日本の大学や専門学校を卒業し、介護福祉士の資格を取得した外国人が対象です。
在留期間は5年ですが、在留状況に問題がない限り更新することもできますし、家族滞在ビザの取得も可能です。また、「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」と定められているため、外国人であることを理由に待遇に差が生じることはありません。
特定技能ビザは2019年4月に新たに導入された在留資格で、一定の専門職・技能を有し、即戦力となる外国人人材を幅広く受け入れるために就労を目的としたものです。5年間のみ在留可能で、家族の帯同は認められていません。
介護ビザを取得する方法と、申請までの流れをご紹介いたします。介護ビザの取得にはいくつかの必要な要件があるため、外国人介護士を雇用したいと考えている方もぜひご覧ください。
介護ビザを取得するために必要なのは、以下の4つの要件です。
・ 介護福祉士の資格を取得しておくこと
・ 介護福祉士として介護施設と雇用契約を結ぶこと
・ 介護または介護の指導という職務内容であること
・ 日本人が働いている場合と同等額以上の報酬を受け取っていること
「介護福祉士の資格」には、2年以上介護福祉士の養成学校に行くことと、介護福祉士の国家試験に合格することが必要です。
日本で介護福祉士の資格を取得するには、介護施設で3年の経験を積んで研修を受ける、介護福祉士養成施設に通う、福祉系高校に通うなどのルートがあります。日本で介護士として働きたい外国人は、留学生として来日し、介護福祉士養成施設に通って資格を取得し、介護職として採用されたら介護ビザを申請する、という流れをとることとなります。
介護福祉士養成施設を2017~2021年に卒業する学生は、卒業すれば介護福祉士として働くことができますが、卒業後に継続的に5年以上実務経験を積むか、5年以内に筆記試験に合格しなければなりません。
2022年以降の卒業生については、資格習得には筆記試験の合格が必要となるため、学校を卒業しただけでは介護福祉士の資格を得られる訳ではなくなります。
外国人が介護ビザの資格を取得するには、日本で介護福祉士の国家資格を取得しなければならないことはご説明した通りです。それでは、具体的にどうやっていけばいいのでしょうか?変更手続きなどを含めて解説します。
介護ビザの在留資格を取得する為には、まず「留学」の在留ビザで介護福祉士養成学校に通わなければいけません。介護福祉士は日本の国家資格で、母国で親や親戚を介護していたというだけでは受験することができません。
介護福祉士養成学校は、最短で2年で、介護技術や理論などを学ぶことができます。介護福祉士養成学校を卒業後は、国家試験を受験します。無事合格し介護施設に採用されることが決まれば、法務省入国管理局に在留許可変更申請書を提出することで、留学ビザから介護ビザに変更することができます。
また、介護福祉士の国家資格を取得して一時帰国し、介護ビザの在留資格で新規に入国することもできます。介護ビザの在留期間は5年ですが、在留状況に問題が見られなければ更新が可能で、回数にも制限はありません。
この記事では、介護ビザの取得方法について紹介してきました。介護ビザを取得している人は、日本語の介護福祉士の試験に合格した、日本人介護福祉士と同様の知識と技術を持ち合わせています。
介護ビザは、他の介護職に関わる在留資格とは違い、更新すれば在留状況に問題がない限りずっと在留することができる上、その家族の在留資格も取得することもできます。
介護ビザを取得している外国人はまだ少なく、EPAによる特定活動ビザで介護の仕事をしている人が多いのが現状です。また、今後は特定技能ビザという在留資格で介護の仕事をする外国人も増えていくと見込まれています。
しかし、今認められている在留資格の中で一番即戦力として働くことができるのは、介護ビザを取得している人材なのではないでしょうか。介護ビザを取得している人は、日本の介護福祉士の資格を持っているため、日本語能力や介護に必要なコミュニケーション技術も習得しています。
2019年現在、介護福祉士養成学校を卒業したが国家資格を取得していない人については、実務経験か筆記試験が必要です。雇用側は、このような経過措置と在留資格についてしっかり把握しておかなければならないため、十分な注意が必要となります。
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